映画 「ジャグラー/ニューヨーク25時」 今でも当時のワクワクが蘇る! 【ネタバレあり】

この映画を観るのは40年振り。いや多分それ以上だと思う。
高校生の時、図書館で原作を借りた。とても面白かった。ストーリー自体は富豪の娘と間違えられて誘拐された娘を救出しようとする元警察官のトラック運転手がニューヨークの街を走り回ると云うシンプルなもの。そこに様々な人間が絡んでくる。娘のために無茶をしまくる主人公ジョンを寄ってたかって邪魔する奴等が出てくるのだ。

原作はテンポがよくスリリングでとても面白かった。当時の私にジョンはカッコよく思えた。うろ覚えで申し訳ないが、幾つかの改変もある。確か、とても優しいオネエキャラがいた筈だったが、当時は難しかったのだろうか。
記憶が正しければ、原作を先に読んでいる。そのため映画によってイメージはかなり修正されたに違いない。けれどジョンのイメージはかなり自分のと近かったのだろう。海外についての情報量が現在と比べれば少なかった当時、それでも外国に興味があって仕方なかった自分は(そもそもこの本を選んで読んでいるのだし)雑誌や映画、TVで得た映像から脳内にイメージを起こしつつ文字を追ったのだ。
ジョンはとにかくニューヨークの街を走り回る。文字通り走り回るだけでなく車も使い、当然のことながら大量の車に損害が出てしまう。大人になるといけない、つい保険のこととか気になってしまう。それはともかく、このシチュエーションは「ダイ・ハード3」を彷彿とさせる。SNSでやり取りしている映画好きの方は「コマンドー」の元ネタではないかと指摘する。設定の違いはあるが、確かにそれもあり得るし考えもつかなかった。
高校生の私にはニューヨークの街がとても魅力的に思えた。改めて見るとなかなかカオス的であるが、あの当時のアメリカの魅力は失われていない。

誘拐犯はサイコパス的な男として描かれているが21世紀の現在、もっと強烈なサイコパス、或いは今流行のダークトライアドみたいなのを散々見てきてしまったためか、寧ろ気の毒な男に見えてくる。J.フェニックス版「ジョーカー」的な哀しさもある。
一方で、過去の確執からジョンを執拗なまでに追い回すバーンズ巡査部長。彼は街中でショットガンをぶっ放すのだ。当然通行人らは悲鳴を上げ身を伏せ逃げ惑う。これが1980年に撮影されていたとは驚きだ。このバーンズの方がサイコパスに思えてくる。勿論ここ十数年、街中の銃撃戦のある映画は撮られているが、結構コンプライアンスに配慮されているんだなと思ってしまったほど怖ろしいシーンだった。
絡んでくる移民の不良グループも怖ろしい。何が恐ろしいかって、バーンズと同じく話が通じないのだ。言葉が通じないのではない。けれど実際に海外にはこういった移民/外国人の群れがいるのも事実。アテネ中心から少し北西の地域ではギリシャ語なんて聞かれないし、少額のお金のために命を奪われる。日本がこうならないことを祈るばかり。
コンプライアンスに関しては、ジョンが別れた妻に激しい暴言を吐く場面や、誘拐犯がジョンの娘に恋愛感情のようなものを抱いてしまい(根底には自己愛からくる執着のようなものなのだろうけれど)キスしたり「一緒に逃げよう」と言い出すところなど、現在ではよほど制作側の意図が無い限り難しい表現だと思われる。

この小説と映画はほぼ同時期に読んだ「ジャッカルの日」や「ファイアースターター」と共に高校生の自分の潜在意識に大きな爪痕を残した。(後者の映画は今一つだったが)いまやカルト映画、「幻の傑作」として扱われていることに大きな喜びを感じている。